子孫の凱旋門賞V夢見る“英雄の母”ウインドインハーヘア
ディープインパクトやブラックタイドを産んだ“偉大なる母
本格的な夏競馬到来に合わせて、岡崎記者が懐かしの名馬を訪ねる夏の恒例企画「純情牧場巡り 君に会いたい」が4年目に突入。第1回は名繁殖牝馬のウインドインハーヘア。ディープインパクトやブラックタイドを産んだ“偉大なる母”は26歳を迎えた今も健在。北の大地でアナタの訪問を待っている。
競馬界に多大な影響を与えた“偉大な母”は今、誰でも会える場所にいる。新千歳空港から車で約15分のノーザンホースパーク。ウインドインハーヘアは12年に牝馬(レスペランス)を出産して繁殖を引退。ノーザンファームで余生を過ごしていたが14年に母馬のいない乗用馬の教育係としてノーザンホースパークに派遣され任務終了後もけい養されている。乗馬営業スタッフの神垣由希さん(26)は“ウインド”と愛情たっぷりに呼びかける。
「教育係の馬が欲しいとノーザンファームに相談したところ、ウインドが来ることになったんです。性格はおとなしく、とても優しいので、立派に教育係を務めてくれました」
午前8時に仲良しのポニーと一緒に放牧に出て、午後2時まで外で過ごす。お世辞抜きに体つきは若々しく、まだまだ繁殖牝馬として活躍できるのでは…と思ってしまうほどだ。
現在の日本の競走馬の血統は大きく2つに分けられると言ってもいい。ウインドインハーヘアの血を持つ馬と持たない馬だ。今年の上半期平地G1でいえば12個中5個をウインドインハーヘアの子孫が制した。
「ウインドの血を引くサトノダイヤモンド(父ディープインパクトの母)やキタサンブラック(父ブラックタイドの母)、レイデオロ(母ラドラーダの祖母)が活躍して、日本の競馬が盛り上がることは本当にうれしいですね。ディープインパクトがなし得なかった凱旋門賞制覇の夢を、ウインドの孫やひ孫が成し遂げる日も近いのかなと思います」
ウインドインハーヘアの名は幾多の優駿の血統表に残り、存在が色あせることは決してない。北の大地で涼しい風に吹かれながら、その血を引く者にエールを送り続ける。
◆ウインドインハーヘア(牝26歳)1991年2月20日生まれ。父アルザオ、母バークレア。愛国産。現役時代は13戦3勝。4歳時には初子(グリントインハーアイ)を受胎しながら独G1アラルポカルを制した。現役引退後は米国で繁殖入り。00年からは北海道のノーザンファームでけい養され、ディープインパクトやブラックタイドなどの活躍馬を産んだ。